都倫研からのおしらせ

東京都高等学校公民科「倫理」「公共」研究会の情報をお伝えします。

令和5年度 第3回研究例会のご案内

都倫研では下記の通り、冬の研究例会を開催いたします。

新課程で実施されている「倫理」の公開授業とともに、政治哲学・政治理論の研究者をお招きしての学術講演を実施することとなりました。

校務ご多忙の折りとは存じますが、万障お繰り合わせの上ご参加くださいますようお
願い申し上げます。

1.日 時 令和6年1月29日(月) 13時50分~17時00分(13時30分受付開始)
2.会 場 東京都立六本木高等学校
〒106-0032 東京都港区六本木6-16-36 TEL:03-5411-7327

東京メトロ日比谷線都営地下鉄大江戸線六本木駅徒歩7~11分
東京メトロ南北線都営地下鉄大江戸線麻布十番駅徒歩9分
(詳細は、同校ホームページをご覧ください)
https://www.metro.ed.jp/roppongi-he/access/access.html

 

3.内 容
13:30~ 受付開始
13:50~15:20 学術講演 「ロトクラシー:くじ引きで国会議員を選ぶ」
日本学術振興会特別研究員(PD)/駒澤大学非常勤講師 山口 晃人 先生
15:35~16:20 公開授業 「社会契約説」(「倫理」) 東京都立六本木高等学校 松島 美邦 先生
16:30~16:50 公開授業についての研究協議
16:50~17:00 事務連絡・閉会

 

※事前申し込みは不要です。
※本研究例会は、東京都教育委員会が認定した研究推進団体の研究普及活動です。
都立高校の先生方は「研修出張」でのご参加が可能です。
※当研究会は個人会費制です。年会費未納の方は会費1,000円をご用意下さい。
学生、大学院生は、年会費は不要です。
お問い合わせ先:東京都高等学校「倫理」「公共」研究会 事務局
東京都立杉並高等学校 伊藤 昌彦 TEL 03-3391-6530 FAX 03-3398-3767
E-mail Masahiko_Itou@education.metro.tokyo.jp

 

■公開授業について■(松島美邦先生より)
本校は「定時制」「三部制」「単位制」「総合学科」などの特徴を備える、東京都における「チャレンジスクール」です。通学に課題を覚える生徒や、実践的な学びを期待する生徒など、さまざまな生徒を、多芸多才な先生方が、都内トップのバリエーションを誇るさまざまな講座をもって迎え、共に学んでいます。
この学校で、各自の課題を乗り越えようとする生徒たちと、どんな「公共」「倫理」「政治・経済」の授業を実現できるのか、いかに現代社会の諸課題や哲学的問いに共に立ち向かうのか、「哲学カフェ」や教育相談などにも取り組みながら、試行錯誤しております。今回、山口先生のご研究を参考に、政治哲学に相当する単元を取り上げます。私の授業は拙いですが、定時制またはチャレンジスクールで、新課程の公民科の授業をいかにつくっていくか、お考えいただく機会となれば幸いです。
本校は単位制ゆえに、受講生の多くは、本気で「倫理」について学びたい、考えたいと思って受講してくれています。そのような生徒たちが学ぶ姿をご覧いただけたなら、嬉しいです。

 

■学術講演講師プロフィール■
山口晃人(やまぐち あきと)日本学術振興会特別研究員(PD)/駒澤大学非常勤講師
1995 年東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修了。博士(学術)。専門は、政治哲学・政治理論(代表制民主主義論)。ロトクラシー(抽選制議会)をはじめ、子どもの参政権やエピストクラシー(知者による支配)など、既存の代表制民主主義の代替案を研究している。論文に「ロトクラシー : 籤に基づく代表制民主主義の検討」(『政治思想研究』第20 号)、「子どもの参政権の政治哲学的検討——智者政批判との関係から——」(『年報政治学』第72(2)号)など。

■学術講演要旨■(山口先生より)
ポピュリズムが台頭し、「代表制の危機」が叫ばれる現在、立法議会の改革は急務である。本講演では、選挙制議会に代わる立法制度として、立法府の代表者を有権者からの無作為抽出によって選ぶロトクラシー(抽選制議会)を検討する。富裕層、世襲議員、中高年男性に占められる既存の選挙制議会とは異なり、ロトクラシーの議会は「人口の縮図」を実現することで、より適切に民意を反映できると考えられる。ロトクラシーが注目される背景を含め、その是非について考えたい。

 

参考資料:

くじ引きで国会議員に? 「ロトクラシー」というオルタナティブ(山口 晃人) | 現代新書 | 講談社(1/6)


議員は抽選で選べるか?――代表制デモクラシーを政治哲学の観点から問い直す【山口晃人】 | ガクモンのめ | せかいしそう

令和5年度 冬季研究協議会のご案内

 令和5年12月1日

令和5年度 冬季研究協議会のご案内

都倫研では下記のように冬の研究協議会を開催いたします。今回は,「公共」の実践事例発表とともに,新課程「倫理」の心理学分野について,その学習指導に寄与すべく学術講演等を実施することとなりました。学期末でご多用の折りとは存じますが,万障お繰り合わせの上ご参加くださいますようお願い申し上げます。

1.日 時  令和5年12月26日(火) 13時30分~17時05分(13:15より受付)

2.会 場  東京都立井草高等学校 2階 会議室 (地図はこちら

       〒177-0044 東京都練馬区石神井2-2-43   電話 03-3920-0319

           交通  西武新宿線 上石神井駅より 徒歩10分(急行・準急停車)

           上井草駅より  徒歩8分(各駅停車)

              西武バス  石神井公園駅から荻窪駅行 井草高校前下車 徒歩1分

          荻窪駅から石神井公園駅行   同

3.内 容

13:15~ 受付開始 

13:30~14:10 「公共の扉」を生かした授業事例の発表

  事例 ①「AIの進化と職業選択」   東京都立稔ヶ丘高等学校 照井 恒衛 先生

  事例 ②「ワクチンのグローバルな分配に向けた国際協力のあり方とは?」

筑波大学附属駒場中学・高等学校 山本 智也 先生

*『「公共の扉」を生かした13主題の授業事例集』(清水書院)から,授業事例を取り上げて検討します。購入済みの方はご持参下さい。(当日,会場でも販売します)

14:20~15:20   新課程「倫理」心理学分野から考える(報告:都倫研研究部)

15:30~17:00   学術講演「心理学教育への期待—パーソナリティ心理学の観点から—」

早稲田大学 教授 小塩 真司 先生

17:00~17:05   事務連絡・閉会

※当研究会は,東京都教育委員会によって認定された教育研究普及事業認定団体です。

都立高校の先生方は「内国研修」でのご参加が可能です

※当日参加できますが,参加人数の把握のため,12月23日(土)までに,

次のフォームにご入力ください。(https://forms.gle/pQ4gtVKkAjC4o4Ep9

※当研究会は個人会費制です。年会費未納の方は会費1,000円をご用意下さい。

学生,大学院生は,年会費は不要です。

お問い合わせ先:東京都高等学校「倫理」「公共」研究会 事務局

東京都立杉並高等学校  伊藤 昌彦 TEL 03-3391-6530   FAX 03-3398-3767

                             E-mail Masahiko_Itou@education.metro.tokyo.jp

■研究部報告について■(都倫研研究部より)

 新課程「倫理」の教科書をみると,心理学の分野での新出語句が多くなっている。認知心理学や感情心理学など,これまでの発達心理学精神分析,青年期の心理学の内容とは様変わりしている。さらに,各教科書会社により取り上げる内容が異なる。そこで,新旧の教科書すべてについて,その内容(太字語句や取り上げている人物)の比較・分析を試みる。心理学を専門としていない教師が,心理学分野をどのように教えていくことができるかを検討し,授業実践に資する報告を目指す。

(報告者:東京都立西高等学校 菅野功治,東京都立墨田川高等学校 永田えり夏,かえつ有明中学・高等学校 古賀裕也,東京都立六本木高等学校 松島美邦,東京都立井草高等学校 杉浦光紀(敬称略))

■学術講演講師プロフィール■

 小塩真司(おしお・あつし)1972年愛知県生まれ。名古屋大学大学院教育学研究科博士課程後期課程修了。中部大学講師,助教授,准教授を経て,2012年より早稲田大学文学学術院准教授。2014年より同教授。専門はパーソナリティ心理学,発達心理学。著書に『性格とは何か』(中央公論新社),『性格がいい人,悪い人の科学』(日本経済新聞出版社),『Progress & Applicationパーソナリティ心理学』(サイエンス社),『性格を科学する心理学のはなし』(新曜社),『パーソナリティ・知能 キーワード心理学11』(新曜社,共著),『非認知能力:概念・測定と教育の可能性』(北大路書房,編著)など。

■学術講演要旨■(小塩真司先生より)

 新課程の高校倫理のなかで,心理学が大きく取り上げられることになりました。心理学は日常の我々の生活の中でのふるまいについて多くの洞察を与えてくれる学問であるとともに,一般的に文系の学問でありつつも,科学的な研究手法を組み合わせた方法論を持つ学問でもあります。心理学の研究領域は多岐にわたります。その中でも,すべての人間において一般的な法則を導き出そうとする研究領域と,個々人の差や違いに焦点を当てた研究領域があります。ただし,個々人の差に焦点を当てたとしても,その差を導く背景には一般法則が介在しています。今回は特に,個々人の差について検討するパーソナリティ心理学を中心として,研究の概説や高校で学んでほしいことなどについて考えていきたいと思います。

『性格とは何か』(中央公論新社),『非認知能力:概念・測定と教育の可能性』(北大路書房,編著)をお手にとっていただけると参考になるかと思います。

 

※研究会の活動については都倫研ホームページ http://www.torinken.org/

ならびに,都倫研ブログ https://torinken.hatenablog.com/ をご覧下さい。

東京都高等学校「倫理」「公共」研究会編著 新科目「公共」「公共の扉」を生かした   13主題の授業事例集 発刊のお知らせ

『新科目「公共」「公共の扉」を生かした   13主題の授業事例集』が発刊されました。

 

当研究会が2018年に発刊した大項目A「公共の扉」の実践事例集、『新科目「公共」「公共の扉」をひらく授業事例集』(https://www.shimizushoin.co.jp/books/view/148)

の続編にあたります。

高校「公共」の学習指導要領に示されている13の主題に応じた授業テーマ25を設定し、指導のねらいや授業の要点をまとめております。

探究課題やまとめにすぐ使える図や資料、ワークシート(ホームページからダウンロード可)などもございますので、ぜひご一読ください。

 

詳細はこちら

shimizushoin.co.jp

令和5年度 第二回研究例会のご案内

5都倫研第3号

 令和5年10月4日

公民科教諭 殿

地理・歴史科教諭 殿

東京都高等学校 「倫理」「公共」研究会

                                会長  渡邊 範道

                                                    (東京都立墨田川高等学校長)

 

令和5年度 第2回研究例会のご案内

 

  清秋の候、先生方には益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より当研究会の活動のために格別のご支援とご高配を賜り、心より御礼申し上げます。

  さて、都倫研では下記のように秋の研究例会を開催いたします。旧課程で最後となる必修「倫理」の公開授業とともに、教育社会学の本田先生をお招きしての学術講演を実施することとなりました。校務ご多忙の折りとは存じますが、万障お繰り合わせの上ご参加くださいますようお願い申し上げます。

 

 

1.日 時  令和5年10月23日(月) 14時20分~17時25分(14:00より受付)

 

2.会 場  東京都立小川高等学校

〒194-0003 東京都町田市小川2-1002-1 TEL:042-796-9301

交通 JR横浜線成瀬駅より徒歩5分

     (詳細は、同校ホームページをご覧ください)

                    https://www.metro.ed.jp/ogawa-h/access/access.html

 

3.内 容

14:00~ 受付開始

14:20~15:10 公開授業

実存主義と自己責任論について」(3年7組「倫理」)

東京都立小川高等学校 別木 萌果 先生

15:20~15:40 公開授業についての研究協議

15:50~17:20 学術講演

  「日本社会の変容と課題:メリトクラシーを弱毒化するために」

東京大学 教授 本田 由紀 先生

17:20~17:25 事務連絡・閉会

 

※事前申し込みは不要です。

※本研究例会は、東京都教育委員会が認定した研究推進団体の研究普及活動であるため、都立高校の先生方は「研修出張」でのご参加が可能です。

※当研究会は個人会費制です。年会費未納の方は会費1,000円をご用意下さい。

学生、大学院生は、年会費は不要です。

 

お問い合わせ先:東京都高等学校「倫理」「公共」研究会 事務局

東京都立杉並高等学校  伊藤 昌彦 TEL 03-3391-6530   FAX 03-3398-3767

                             E-mail Masahiko_Itou@education.metro.tokyo.jp

 

■公開授業について■(別木萌果先生より)

実存主義とは「生きる道を自分で切り開く、今ここにあるひとりの人間の現実存在としての自分のあり方」を求める思想である。主体性が求められる現代において、重要な考え方であるだろう。一方で、実存主義者の一人であるサルトルの思想「人間は自由の刑に処せられている」は近年の自己責任論とも結びつくのではないだろうか。

本校の3学年は全員倫理を必修科目として履修しているが、誰も受験で倫理を選択しない点、毎回の授業でディスカッションを多く取り入れている点に特色がある。2学期以降は近代以降の哲学史を現代の諸課題と絡めて扱ってきた。しかし、差別や格差について議論する際に「格差があるのはわかったけど、仕方ないと思う」「差別があるのはわかるけど、なくすのは難しいし大変だから現状のままでいいと思う」といった現状を追認する生徒も多い。本授業では、「収入減によって大学を中退するのは自己責任?」といった問いから、実存主義や自己責任論を批判的に検討することを目指したい。

 

 

■学術講演講師プロフィール■

 本田由紀(ほんだ・ゆき)東京大学大学院教育学研究科教授/日本学術会議連携会員

東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。日本労働研究機構研究員、東京大学社会科学研究所助教授等を経て、2008年より現職。専門は教育社会学。教育・仕事・家族という3つの社会領域間の関係に関する実証研究を主として行う。主な著書に、『若者と仕事』(東京大学出版会)、『多元化する「能力」と日本社会』(NTT出版、第6回大佛次郎論壇賞奨励賞)、『「家庭教育」の隘路』(勁草書房)、『軋む社会』(河出文庫)、『教育の職業的意義』(ちくま新書)、『学校の「空気」』(岩波書店)、『もじれる社会』(ちくま新書)、『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)など。

 

 

■学術講演要旨■(本田由紀先生より)

 90年代以降、経済の低迷、少子高齢化と人口減少、困窮層の蓄積と世代間連鎖、著しいジェンダー不平等など、日本社会には様々な機能不全が顕在化している。その底流にあるのは、社会・政治・人間に関する特定の考え方・感じ方である。マクロな社会構造と、ミクロな人々の意識が相互に連関し合って現状を生み出してきたプロセスを、国際比較や長期推移に関する諸データから読み解くことを試みる。

参考著書:本田由紀『「日本」ってどんな国?』(ちくまプリマー新書、2021年)

      本田由紀『社会を結びなおす』(岩波ブックレット、2014年)

夏季研究協議会 読書会のお知らせ

先日はお暑い中、第1回研究協議会 総会にお越しいただきありがとうございました。

さて、都倫研では下記のとおり、令和5年度夏季研究協議会を開催いたします。校務ご多用のところとは存じますが、ぜひご出席下さいますようご案内申し上げます。

 

1.日 時 

令和5年8月16日(水)13:30~17:00(13:15受付開始)

2.会  場

東京都立井草高等学校 2階 会議室

アクセスマップ | 東京都立井草高等学校

〒177-0044 東京都練馬区石神井2-2-43   電話 03-3920-0319

3.内 容 

(1)13:30~14:50 「倫理」「公共」のための読書会

筑波大学大学院博士課程 勝俣 陸 先生

テキスト:ホルクハイマー,アドルノ啓蒙の弁証法』徳永恂訳、岩波文庫、2007年

 

(2)15:00~15:45 実践報告

「“公共”に向けて倫理の授業を考える―進路多様校と通信制高校での授業実践―」

新宿山吹高等学校 中村 祥太 先生

<中村先生より>

教員7年目までに行ってきた、前任校の受験指導のない「倫理」の実践と、現在の通信制課程での「公共」「倫理」の実践について紹介し、今後の課題を整理して皆さんと一緒に考えさせていただきたいと思います。

 

(3)15:55~16:55 公民科「観点別評価」についての研修会

  • 観点別評価の状況・方法についての報告(都倫研 研究部より)
  • 観点別評価に関する授業実践共有(お持ち寄りいただいた教材等を基に検討)

※いわゆる「観点別評価」について、ご自身の実践をお持ち寄りください。

ご用意いただける場合には、各自、たとえば振り返りシート、授業用の教材プリント、試験問題、評価基準のシートなどを30部ずつ、ご持参ください。
(個人情報の扱いにはご注意ください)

 

(4)16:55~17:00    事務連絡・閉会

 

4.年会費 1,000円(当日受付、本年度の第1回研究例会にて納入済みの方は不要)

※ご参加には年会費を納入いただいております。

学生、大学院生は、年会費は不要です。

 

5.お問い合わせ

事務局 伊藤 昌彦  E-mail Masahiko_Itou@education.metro.tokyo.jp

東京都立杉並高等学校   電話 03-3391-6530   FAX 03-3398-3767
                                  

  ※当研究会は、東京都教育委員会によって認定された教育研究普及事業認定団体です。
都立高校の先生方は「内国研修」でのご参加が可能です。事前申し込みは不要です。

           

■「倫理」「公共」のための読書会(勝俣陸 先生より)■
高校倫理の内容を高校生に分かりやすく教えようとするあまり、実際に哲学書に書いてある内容から大きく外れる説明となったり、哲学書で議論されている内容の本質からずれてしまったりするケースが、YouTubeなどの「分かりやすい」メディアの台頭に伴って、後を絶たなくなっているように思います。
ホルクハイマーとアドルノの『啓蒙の弁証法』は、実際の授業で扱うのが最も難しい哲学書の一つだと思います。同書は1939年から1944年にかけて、フランクフルト学派の第一世代と呼ばれるホルクハイマーとアドルノが、ナチ•ドイツの迫害から逃れ、カリフォルニアで亡命生活を送っている最中に共同で執筆しました。「序文」で「なぜ人類は、真に人間的な状態に踏み入っていく代わりに、一種の新しい野蛮状態へ落ち込んでいくのか」という問いを掲げ、西欧文明に対する鋭い批判を展開する『啓蒙の弁証法』は、巻頭論文の「啓蒙の概念」、その補論であるオデュッセウス論、サド論、さらに文化産業論、反ユダヤ主義論、断片集、の六つの部で成り立っています。今回の読書会では同書すべての内容の核となる「序文」と巻頭論文の「啓蒙の概念」を読解していきたいと思います。
啓蒙の弁証法』それ自体を、あるいは同書の重要概念となる「啓蒙」や「弁証法」といった概念をどのように授業で扱うか、あるいは『啓蒙の弁証法』の知見から教師が何を学ぶことができるか、参加者の皆さんと討議できれば幸いです。

テキスト
・ホルクハイマー・アドルノ啓蒙の弁証法』徳永恂訳、岩波文庫、2007年

サブテキスト
上野成利他編著『『啓蒙の弁証法』を読む』岩波書店、2023年
仲正昌樹『現代ドイツ思想講義』作品社、2012年
細見和之フランクフルト学派中公新書、2014年

令和5年度 都倫研総会ならびに第一回研究例会のお知らせ

都倫研では下記の通り令和5年度総会並びに第1回研究例会を開催いたします。

ご多用のところとは存じますが、ぜひご出席下さいますようご案内申し上げます。

 

1.日 時  令和4年6月22日(木)13:45~17:30(13:15受付開始)

 

2.会  場  東京都立墨田川高等学校 第一校舎 2年E組と一階会議室 
※ 会場は、グランドのある広い敷地の方の建物です。校内へは第一校舎と第二校舎の間を通る道に面する正門からお入り下さい。

〒131-0032 東京都墨田区東向島三丁目34番14号

電話 03-3611-2125
東武スカイツリーライン 東向島駅から徒歩5分 東武曳舟駅から徒歩6分
京成押上線  京成曳舟駅から徒歩8分
都営バス    東向島広小路から徒歩2分 百花園前から徒歩4分

アクセスマップ | 東京都立墨田川高等学校

 

3.内 容

(1) 13:45~14:30 研究授業

(2年E組 「公共」の「公共的な空間における基本的原理」)

東京都立墨田川高等学校 西山 椋子(にしやま りょうこ)先生
(2) 14:40~15:10 研究協議

(3) 15:20~15:50 総会

(4) 16:00~17:20 学術講演

演題「現代宗教とカルト問題」

講師 島薗 進(しまぞの すすむ)先生

(5) 17:25~17:30 事務連絡
 
4.年会費 1,000円(当日受付)
※当研究会は個人会員制です。ご参加には年に一度会費を納入いただいております。
学生、大学院生については、年会費は不要です。

5.お問い合せ  事務局  伊藤 昌彦
東京都立杉並高等学校   電話 03-3391-6530   FAX 03-3398-3767

※当研究会は東京都教育委員会によって認定された教育研究普及事業認定団体であるため、都立高校の先生方は「内国研修」でのご参加が可能です。


◆公開授業について◆(西山 先生より)
本校では、公共は2年次必履修科目として今年度からのスタートです。公民科新学習指導要領の要となる「公共の扉」から、「公共的な空間における基本的原理」の部分を授業では取り上げます。4月からは、問いの構造化を意識づけ、生徒自身も問いを持てるように指導してきました。また、一人一台端末を活用して授業展開してきました。どの学校でも創意工夫して実践しているであろう「公共の扉」部分について、授業をもとに協議を深め、学ばせていただきたい、と考えています。

◆学術講演講師プロフィール◆(島薗 先生)
1948年東京生まれ。東京大学大学

院人文科学研究科博士課程・単位取得退学。東京大学大学院人文社会系研究科・教授、上智大学グリーフケア研究所所長を経て、現在はNPO東京自由大学学長、大正大学客員教授。専門は近代日本宗教史、宗教理論、死生学、生命倫理。著書に「日本人の死生観を読む」「ともに悲嘆を生きる』(ともに朝日新聞出版)、「いのちを“つくって〟もいいですか?』『宗教を物語でほどく』『なぜ「救い」を求めるのか』(ともにNHK出版)、「グリーフケアの時代』(共著、弘文堂)、『ポスト問題の新宗教』(法蔵館)、『神聖天皇のゆくえ』、『新宗教を問う』(ともに筑摩書房)、『教養としての神道』(東洋経済新報社)、『政治と宗教』、『国家神道と日本人』(共著)(岩波新書)など。

◆学術講演要旨◆(島薗 先生より)
2022年7月8日の安倍元首相殺害事件以来、統一教会が大きな問題として関心を集めている。そもそもなぜ、多くの被害者を生むような宗教集団が大きな勢力をもって存続してきたのか。政治家がこうした集団と連携し支え合うような関係がなぜ生じたのか。このような「カルト」問題が生じるのはどうしてか。このように宗教が市民を脅かすようなことは日本に特殊なことなのか。現代社会において宗教はどのような役割を果たしうるのか。以上のような問題について学校でどのように学んでいくことができるのか、ともに考えていきたい。

岩波新書の『政治と宗教—統一教会問題と危機に直面する公共空間』、ちくま新書の『新宗教を問う』をのぞいていただけるとうれしいです。

 

令和4年度 第3回研究例会のご案内

大寒の候、先生方には益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より当研究会の活動のために格別のご支援とご高配を賜り、心より御礼申し上げます。

さて、都倫研では下記のように第3回研究例会を開催いたします。

内容としては、対話的な活動を盛り込んだ授業実践報告、さらに、倫理に本格導入される「哲学対話」に関する学術講演会を予定しています。万障お繰り合わせの上ご参加くださいますようお願い申し上げます。

 

1.日 時

令和4年2月25日(土)13時00分~17時00分 (12:40より受付)

 

2.会 場

東京都立白鷗高等学校 西校舎 4階 視聴覚室

東京都台東区元浅草3—12-12
※東校舎ではございません。ご注意ください。
交通:都営大江戸線つくばEX  新御徒町駅から徒歩5分
東京メトロ銀座線 稲荷町から徒歩7分
東京メトロ日比谷線 仲御徒町駅から徒歩9分
JR山手線 御徒町駅から徒歩12分
JR・東京メトロ 上野駅から徒歩14分 

アクセスマップ | 都立白鷗高等学校・附属中学校

 

3.内 容
13:00~14:40 録画による公開授業及び研究協議
「「話し合い考える」授業の実践~学校設定科目「総合社会研究α」(6年(高3)を通して~」

東京大学教育学部附属中等教育学校

教諭 新海 太郎 先生

 

14:55~16:35 講演「哲学対話を用いた哲学、倫理、公民科の教育」

独立行政法人日本学術振興会特別研究員(PD)

堀越 耀介 先生

 

16:35~16:50  「葦名先生を偲んで」

 

16:50~16:55 事務連絡・閉会

 

4.お問い合せ
東京都高等学校「倫理」「公共」研究会 事務局
東京都立杉並高等学校  伊藤 昌彦

TEL 03-3391-6530   FAX 03-3398-3767
E-mail Masahiko_Itou@education.metro.tokyo.jp

※本研究例会は、東京都教育委員会が認定した研究推進団体の研究普及活動であるため、都立学校の先生方は「研修出張」でご参加可能です(半日の振り替えが付きます)。

 

※事前申し込みは不要です。当研究会は個人会費制となっておりますので、年会費未納の方は会費1,000円をご用意下さい(学生・院生無料)。

■録画による公開授業要旨■(新海先生より)
学校設定科目「総合社会研究α」は哲学や倫理、現代社会の諸問題を討論形式で考える6年生(高3)の選択科目です。「受験は平等か」「大人になるとは」「幸せ」「死」「投票義務化」「歴史」「ネット空間の言語」「自己と他者」「不死の薬」「アメリカの銃問題」など、1年間で40以上のテーマを扱いました。本授業はその最終回で、「「考えること、話し合うこと」を考える」というテーマで行いました。事前に生徒にレポートを提出させ、それを冊子にしたものを全員に配布し読んでくるよう指示してあります。1年間を通して、グループ議論と全体議論を繰り返してきましたが、その意義を生徒たち自身が考えるという構成です。①学んだ知識の活用、②相手を尊重した議論、③授業を楽しんでいるか、の三点を意識しています。みなさまからのご助言やご批判をもとに、こうした授業スタイルの可能性を考えられれば幸いです。

 

■講演講師プロフィール■堀越 耀介(ほりこし ようすけ)先生
東京大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。独立行政法人日本学術振興会特別研究員(PD/明治大学)。東京大学共生のための国際哲学研究センター(UTCP)上廣共生哲学講座特任研究員。哲学プラクティス/哲学対話の研究、教育哲学の研究を行う。著書に『哲学はこう使う : 問題解決に効く哲学思考「超」入門』(実業之日本社、2020年)、共著に『哲学対話と教育 (シリーズ臨床哲学 第5巻)』(寺田俊郎編、大阪大学出版会、2021年)など。論文に「シティズンシップ教育としての『子どもとする哲学(P4C)』――『民主的な教育』としての哲学対話を擁護する」(『倫理道徳教育研究』1(5) 17-33 2022年)、「探究の共同体における『思考』をどのように位置づけるべきか――子どもの哲学(P4C)の目的をめぐって」(『思考と対話』1(1) 23-33 2019年)、「哲学で開業する:哲学プラクティスが拓く哲学と仕事の閾」(『現代思想』50(10) 98-107 2022年)など。

 

■講演要旨■
現在、学校教育のみならず、企業や組織、街や公共施設などで「哲学対話(P4C/子どもとする哲学)」が大きな注目を集めています。高等学校においても、新学習指導要領で示されているように、科目「倫理」において哲学対話が導入されることとなりました。哲学対話を高校生とともに行うにあたり、その進行役を教員が務める場面も確実に増えていくように思われます。本講演では、哲学対話を用いた教育にかんする歴史・理論的背景のみならず、実践事例をもとに、哲学対話を進行する上で役立つ方法についてもお話しできれば幸いです。