都倫研からのおしらせ

東京都高等学校公民科「倫理」「公共」研究会の情報をお伝えします。

令和元年度 都倫研第三回研究例会

 

1.日 時  令和2年2月18日(火)14時20分~18時00分

2.会 場  東京都立足立新田高等学校 視聴覚教室(3階)
        〒123-0865 東京都足立区新田2-10-16  TEL:03-3914-4211(代表)
        交通 東京メトロ南北線王子神谷」駅下車 徒歩12分
              JR京浜東北線「王子」駅下車 バス・徒歩15分
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3.内 容
  13:50~ 受付開始 視聴覚教室(3階)
  14:20~15:10 公開授業「他者との差異の認識と合意形成について」(予定)(2学年「倫理」)
              東京都立足立新田高等学校 主幹教諭 加藤 隆弘 先生
  15:20~15:30 公開授業についての研究協議
  15:40~17:10 学術講演「人権に息をふきこむ-レヴィナスの責任論を手がかりに」
              國學院大学 准教授 小手川 正二郎 先生
  17:20~17:50 記念講演「『与える人が与えられる』ことの意味 ―都倫研から学んだこと―」
              東京都立小川高等学校長(前都倫研会長) 山本 正 先生
  17:50~18:00 事務連絡・閉会

■公開授業について■(加藤隆弘先生より)
2013年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」最優秀賞「めでたし、めでたし?(僕のお父さんは桃太郎というやつに殺された)」山﨑博司さん(博報堂)を題材に、「他者との考えには差異があり合意形成するためには対話が必要性である」ことを生徒と学ぶ。具体的には前授業で、桃太郎の立場からの物語を視聴し正義者と悪者を考察した。本時では、鬼の子供からの意見を生徒に提示し、正義者と悪者を再び考察していく。そして、立場の違いにより正義が異なることを認識させ、桃太郎と鬼が共存共栄する合意形成には「対話」が必要であることを生徒に気づかせる授業展開を考えている。

■学術講演講師プロフィール■
略歴:2012年 慶應義塾大学大学院文学研究科修了。2014年國學院大學文学部哲学科助教、2016年國學院大學文学部哲学科准教授(現職)。研究分野:現象学・フランス哲学  著作:『甦るレヴィナス――『全体性と無限』読解』(水声社、2015年)、『現実を解きほぐすための哲学』(トランスビュー、2020年3月出版予定)。共著:『フェミニスト現象学への招待』(ナカニシヤ出版、2020年3月出版予定)、New phenomenological Studies in Japan (Springer, 2019), 『続・ハイデガー読本』(法政大学出版局、2016年)、『終わりなきデリダ』等(法政大学出版局、2016年)など。訳書:サロモン・マルカ『評伝レヴィナス――生と痕跡』(共訳、慶應義塾大学出版会、2016年)最近の関心:性差(フェミニズム、男性性)、人種、家族(親子関係、養子縁組、虐待)、責任(日本国内の難民問題)
■学術講演要旨■(小手川先生より)
 人権を尊重するということが他の諸関心や諸利害によって蔑ろにされたり、人権がそもそも西欧中心的な概念だとして批判されたりする現代において、人権が意味をもちうるとしたらいかにしてでしょうか。フランスの哲学者エマニュエル・レヴィナスは、1985年の論考「人間の諸権利と他者の諸権利」(『外の主体』所収)で、こうした問いに取り組もうとしました。彼の主張は、人権が意味をもちうるのは、私たち一人一人が他人と出会う際に感じる責任から出発することによってのみである、というものです。この一見すると素朴に見える考え方は、「他人と出会うこと」に倫理の本質を見てとるレヴィナスの倫理が実践的な場面でいかなる意義をもちうるかを考えるうえでも重要となります。本講演では、日本における難民受け入れという実践的問題を手がかりに、人権が具体的な他人の具体的な訴えにおいて現れ、その訴えに直面して感じられる責任を通してのみ意味と効力をもつことを強調するレヴィナスの議論がいかなる実践的意義をもちうるかについて、皆さんと一緒に議論できたらと考えています。
■記念講演講師プロフィール■
大学卒業後、カトリック系の中高一貫校に4年間勤務。教科書だったコンプリ先生達が書かれた【人間を考える】に導かれて、都倫研の大会に出席する機会を得、その活動のすばらしさに触発されて、公立高校の受験を目指し昭和62年度「倫理」で入都してから都倫研の事務局を務めるようになった。その後、資料集、指導書、授業実践集等の執筆を多く任され、倫理のテーマ的な取り組みに尽力してきた。平成13年から都立代々木高校三部制を皮切りに副校長を9年間、校長は現在の小川高校で10年目(中学校校長3年間を含む)を迎えている。平成19年度より6年間、都倫研副会長、平成26年度より5年間、都倫研の会長を任され、平成28年度には、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「考える道徳への転換に向けたワーキンググループ」の委員を歴任した。
■記念講演要旨■(山本先生より)
 「与える人が与えられる」というボブ・バーグとジョン・デイビット・マンの著書があります。この中に「あなたの本当の価値は、どれだけ多く、受け取る以上のものを与えるかによって決まる」という一節があります。そして、「自分の価値を高めるのは、自分自身でしかない。・・・結局、あなたがどういう人間かが問われてくる」とも述べられています。振りかえってみると都倫研と歩んできた私の足跡は、実は、自分を成長させながら「与えることが出来るものは何か」を探し求める旅でもあった。そして、これからも、都倫研は、この使命を見失わずに、存在意義を持って脈々と生き続けていくのだと実感しています。感謝を込めて、「与える人が与えられる」ことの意味を記念講演を通して考えてゆきたいと思います。

※当研究会は東京都教育委員会が認定した教育研究普及団体です。事前申し込みは不要です。
 ※当研究会は個人会費制です。年会費未納の方は会費2,000円をご用意下さい(学生無料)。
 ※お問い合わせ先:東京都高等学校公民科「倫理」「現代社会」研究会事務局
           東京都立西高校 菅野功治(かんのこうじ)
           TEL 03-3333-7771 fax 03-3247-1340
           E-mail Kouji_Kanno@education.metro.tokyo.jp