都倫研からのおしらせ

東京都高等学校公民科「倫理」「公共」研究会の情報をお伝えします。

平成30年度 都倫研 第二回研究例会のご案内

1.日 時  平成30年11月20日(火)14時20分~18時00分

 

2.会 場  東京都立三鷹中等教育学校

       〒181-0004 東京都三鷹市新川六丁目21番21号

       交通 JR中央線 三鷹駅吉祥寺駅よりバス 

       京王線 調布駅・仙川駅よりバス 

       いずれも、「三鷹中等教育学校」下車

       (詳細は、同校HP・アクセス)     http://www.mitakachuto-e.metro.tokyo.jp/site/zen/entry_0000002.html

 

3.内 容

  13:50~    受付開始 (中棟4F・視聴覚室前)

  14:20~15:10 公開授業 「カントの義務論」

          (北棟2F・4学年C組)

       東京都立三鷹中等教育学校 主任教諭 石浦 昌之 先生

  15:30~15:50 授業についての研究協議

  16:10~17:40 学術講演 

       「カントと幸福の問題

         ―なぜカントは功利主義者ではありえなかったのか」

              上智大学文学部 教授 寺田 俊郎 先生

  17:50~18:00 事務連絡・閉会

 

※当研究会は東京都教育委員会が認定した教育研究普及団体です。

※事前申し込みは不要です。

※当研究会は個人会費制です。年会費未納の方は会費2,000円をご用意下さい。学生無料。

※お問い合せ   事務局  菅野功治(かんのこうじ)

             東京都立西高校   tel 03-3333-7771   fax 03-3247-1340

                E-mail Kouji_Kanno@education.metro.tokyo.jp

 

■公開授業について■(石浦昌之先生より)

 西洋近代思想の山場であるカントを取り上げます。前時で、経験論・合理論を批判・統合した認識論を学習し、本時では「人は何をなすべきか」という道徳論を扱う予定です。性善説・理想主義的なカントの義務論は日本の道徳教科書でもお馴染みです。一方、動機を重視するカント道徳は、結果を重視する功利主義の道徳と対立します。授業の後半では思考実験を取り上げて、両者の立場の違いについて対話を行います。

  

■講師プロフィール■

略歴:1991年 京都大学大学院文学研究科(哲学専攻)博士課程学修退学、1992年 洛星中学・高等学校教諭、2001年 明治学院大学助(准)教授、2004年 大阪大学文学研究科(文化形態論専攻)博士後期課程修了(文学博士)、2010年 上智大学教授(現職)。研究分野イマヌエル・カントの実践哲学、近現代の実践哲学、臨床哲学。著作:『世界市民の哲学』(共編著)晃洋書房、2012年、『哲学カフェのつくりかた』(共著)大阪大学出版会、2014年、『グローバル化時代の人権のために――哲学的考察』(共編著)上智大学出版、2017年、スティーヴン・ダーウォル『二人称的観点の倫理学――道徳・尊敬・責任』(共訳)、法政大学出版局、2017年など。

  

■講演要旨■(寺田俊郎先生より)

「カントと幸福の問題――なぜカントは功利主義者ではありえなかったのか」

カントは幸福を批判したという誤解はもはや過去のものでしょうが、カントは幸福を軽視していたという誤解はまだまだ根強いのではないでしょうか。道徳的によい人間であるだけでは最高善とは言えず、道徳的によい人間が幸福でもあることこそが最高善だと考えたこと一つとってみても、カントが幸福というものにきわめて高い価値を置いていたことは明らかです。にもかかわらず、カントはその幸福が道徳の原理にはなりえないと主張しました。なぜでしょうか。この報告では、カントが幸福、幸福を慮る思慮(賢慮、怜悧)、幸福への手段に関わる実用的判断などを高く評価していることを確かめたうえで、カントが幸福を道徳の原理とは見なさなかった理由を見極め、そうすることを通じてカントの道徳論の全容をいっそう明確にすることを試みます。最近の「二人称的観点」(スティーヴン・ダーウォル)に基づくカント解釈にも触れる予定です。