都倫研からのおしらせ

東京都高等学校公民科「倫理」「公共」研究会の情報をお伝えします。

令和7年度 第3回研究例会のご案内

都倫研では下記の通り令和7年度第3回研究例会を開催いたします。校務ご多用のところとは存じますが、ぜひご出席下さいますようご案内申し上げます。

 

1.日  時  令和8年2月9日(月)13時55分~17時00分(13:30受付開始)

2.会  場  東京都立白鷗高等学校・附属中学校西校舎 

※東校舎ではありません。ご注意ください。

〒111-0041 東京都台東区元浅草1丁目6番22号  電話 03-3843-5678

交通:都営地下鉄大江戸線新御徒町駅(A3・A4出口より徒歩5分)

東京メトロ銀座線・稲荷町駅(2出口より徒歩6分)

JR御徒町駅(徒歩10分)・上野駅(徒歩15分)

詳細はこちら

https://www.metro.ed.jp/hakuo-h/access/access.html

 

3.内 容

13:30~    受付開始

13:55~14:40 公開授業

「自己決定権の臨界~安楽死をめぐって~」(中学3年社会)

東京都立白鷗高等学校・附属中学校 池田 仁 先生

会場:3年3組教室(A棟5階)

 

14:50~15:10 公開授業についての研究協議 会場:会議室(B棟1階)

15:20~16:50 学術講演

「混迷の時代に生命倫理を教えるということ―生命倫理教育の現在地」

立命館大学衣笠総合研究機構特別招聘教授

立命館大学生存学研究所副所長 大谷 いづみ 先生

会場:会議室(B棟1階)

 

16:50~17:00 事務連絡・閉会

 

※事前申し込みは不要です。

※本研究会例会は、東京都教育委員会が認定した研究推進団体の研究普及活動であるため、都立高校の先生方は「研修出張」でご参加ください。

※当研究会は個人会費制です。年会費未納の方は会費1,000円をご用意ください。

 学生、大学院生は、年会費は不要です。

お問い合せ:東京都高等学校「倫理」「公共」研究会 事務局

東京都立杉並高等学校 伊藤昌彦   電話 03-3391-6530   FAX 03-3398-3767

                             E-mail Masahiko_Itou@education.metro.tokyo.jp

■公開授業について■(池田先生より)

 本授業は、中学社会科公民的分野の日本国憲法基本的人権の単元において自己決定権と安楽死の問題系を扱う。中学社会科では、習得した見方・考え方を活用した社会課題への考察や課題解決の構想といった活動が重視されているが、現実の課題の複雑性をシンプルカットし、見方・考え方と短絡させて結論を出す生徒も少なくない。本授業では安楽死の是非を単純に問うのではなく、諸資料の読解と対話的な活動を通して、容認は社会にどんな影響をもたらすか、「自己決定」とはそもそも確かなものか、重い病や障害を生きるとはどういう経験かなど、生徒たちの素朴な考えのなかで見過ごされている事柄に目を向けさせ、考えを深めさせたい。また、中学と高校の接続についての議論の材料ともなれば幸いである。

 

■学術講演講師プロフィール■

 大谷いづみ(おおたに・いづみ)立命館大学衣笠総合研究機構特別招聘教授/立命館大学生存学研究所副所長。立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程修了。博士(学術)。東京都立昭和高校、東京都立国分寺高校、東京学芸大学教育学部附属高校大泉校舎、文部科学省初等中等教育局兼任教科調査官、立命館大学産業社会学部教授などを経て、2025年より現職。専門は生命倫理学・生命倫理教育。主たる研究テーマは、安楽死尊厳死言説史及び生・老・病・死の言説構造の解析と組み替え。主な共編著書に『はじめて出会う生命倫理』(有斐閣)、『見捨てられる<いのち>を考える』(晶文社)など。直近の報告・論文に‘Current State of Research on Ich klage an (I Accuse) in Japan,’East Asia Disability Studies Forum 2025.「「医学実験と<当事者参画>を歴史に再配置する」障害学会第22回大会。「生命と倫理: 『虎に翼』『燕は戻ってこない』『PLAN 75』『マエルストロム』を通して」『臨床心理学』増刊16号、「歴史の忘却と連続性: 語られてきたナチス安楽死」政策とコロナ禍の現在」『新薬と臨牀』66号。

 

■学術講演要旨■(大谷先生より)

 bioethics/thanatologyがまだ生命倫理(学)/死生学との名付けをえていない1980年代半ば、手探りで生命倫理の諸課題を「現代社会」倫理部門で実験的にとりあげたころ、都倫研と出会った。手がけた3大テーマは、①生殖技術と親子の絆、②脳死安楽死尊厳死、③出生前診断と選択的中絶である。その後の発表や執筆、都倫研運営の経験が、現在に至る自分の問題意識の礎となっていることに、あらためて気づく。

 1994年、一人の生徒が答案に書き付けた「寝たきり老人や重度障害者が自ら尊厳死を選ぶように支援することが進化した社会である」という文章に、自分はいったい何を教えてしまったのかとショックをうけ、その問いが現在も続く文字通りのライフワークとなった。

 縁あって立命館大学に着任し、開講した「生命倫理学」「いのちの教育」を軌道に乗せた2012年、過労から両足骨折し、ハンドル型電動車椅子訪問介護を常用しながら復帰した。その後も幾度かの休職と紆余曲折を経て昨春定年退職となり、現在は研究専念の立場にある。

 事故の翌年、研究仲間が仏伊のフィールドワークに連れ出してくれたのを期に、移動・情報アクセシビリティのスピンオフ研究を開始し、直近では車椅子が溶け込むライフスタイルの提案をはじめた。いうまでもなく、アクセシビリティは、人と人、人と社会をつなぐ肝である。

 生命倫理の隠されたテーマは優生思想である。生命倫理学は、多かれ少なかれ、人の生(生命・生活・人生)を質によって序列化し、生まれないようにすること、死なせることを論理立てて正当化し、規範化し、啓蒙するフレームをあわせもつ。安楽死尊厳死に限らず、生・老・病・死に関わるトピックは、人生のどこかで誰もが直面する問題でもあるが、生命倫理学/死生学が第二次世界大戦後の英米圏で生成・発展したことによる功利主義新自由主義の接合がこれを促進・強化したともいえる。

 他方、Covid-19パンデミック、ロシア・ウクライナ戦争、ガザ・イスラエル戦争の長期化、トランプ2.0により、世界の情勢は混迷を極めている。日本・韓国の若者の自殺率が微増を続けていることは教育者ならずとも看過できまい。この状況下で、Z世代、α世代と、いのち/生・老・病・死について対話するには何が必要か。世界/社会のありようをふまえつつ、他人事でなく自分事として考える教育実践の可能性を、参加者の皆さんとともに考えたい。

参考文献

 大谷いづみ「解説 それぞれの「良い死/唯の生」」立岩真也『良い死/唯の生』筑摩学芸文庫

https://www.arsvi.com/2020/20221210oi.htm