都倫研からのおしらせ

東京都高等学校公民科「倫理」「公共」研究会の情報をお伝えします。

令和5年度 第二回研究例会のご案内

5都倫研第3号

 令和5年10月4日

公民科教諭 殿

地理・歴史科教諭 殿

東京都高等学校 「倫理」「公共」研究会

                                会長  渡邊 範道

                                                    (東京都立墨田川高等学校長)

 

令和5年度 第2回研究例会のご案内

 

  清秋の候、先生方には益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より当研究会の活動のために格別のご支援とご高配を賜り、心より御礼申し上げます。

  さて、都倫研では下記のように秋の研究例会を開催いたします。旧課程で最後となる必修「倫理」の公開授業とともに、教育社会学の本田先生をお招きしての学術講演を実施することとなりました。校務ご多忙の折りとは存じますが、万障お繰り合わせの上ご参加くださいますようお願い申し上げます。

 

 

1.日 時  令和5年10月23日(月) 14時20分~17時25分(14:00より受付)

 

2.会 場  東京都立小川高等学校

〒194-0003 東京都町田市小川2-1002-1 TEL:042-796-9301

交通 JR横浜線成瀬駅より徒歩5分

     (詳細は、同校ホームページをご覧ください)

                    https://www.metro.ed.jp/ogawa-h/access/access.html

 

3.内 容

14:00~ 受付開始

14:20~15:10 公開授業

実存主義と自己責任論について」(3年7組「倫理」)

東京都立小川高等学校 別木 萌果 先生

15:20~15:40 公開授業についての研究協議

15:50~17:20 学術講演

  「日本社会の変容と課題:メリトクラシーを弱毒化するために」

東京大学 教授 本田 由紀 先生

17:20~17:25 事務連絡・閉会

 

※事前申し込みは不要です。

※本研究例会は、東京都教育委員会が認定した研究推進団体の研究普及活動であるため、都立高校の先生方は「研修出張」でのご参加が可能です。

※当研究会は個人会費制です。年会費未納の方は会費1,000円をご用意下さい。

学生、大学院生は、年会費は不要です。

 

お問い合わせ先:東京都高等学校「倫理」「公共」研究会 事務局

東京都立杉並高等学校  伊藤 昌彦 TEL 03-3391-6530   FAX 03-3398-3767

                             E-mail Masahiko_Itou@education.metro.tokyo.jp

 

■公開授業について■(別木萌果先生より)

実存主義とは「生きる道を自分で切り開く、今ここにあるひとりの人間の現実存在としての自分のあり方」を求める思想である。主体性が求められる現代において、重要な考え方であるだろう。一方で、実存主義者の一人であるサルトルの思想「人間は自由の刑に処せられている」は近年の自己責任論とも結びつくのではないだろうか。

本校の3学年は全員倫理を必修科目として履修しているが、誰も受験で倫理を選択しない点、毎回の授業でディスカッションを多く取り入れている点に特色がある。2学期以降は近代以降の哲学史を現代の諸課題と絡めて扱ってきた。しかし、差別や格差について議論する際に「格差があるのはわかったけど、仕方ないと思う」「差別があるのはわかるけど、なくすのは難しいし大変だから現状のままでいいと思う」といった現状を追認する生徒も多い。本授業では、「収入減によって大学を中退するのは自己責任?」といった問いから、実存主義や自己責任論を批判的に検討することを目指したい。

 

 

■学術講演講師プロフィール■

 本田由紀(ほんだ・ゆき)東京大学大学院教育学研究科教授/日本学術会議連携会員

東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。日本労働研究機構研究員、東京大学社会科学研究所助教授等を経て、2008年より現職。専門は教育社会学。教育・仕事・家族という3つの社会領域間の関係に関する実証研究を主として行う。主な著書に、『若者と仕事』(東京大学出版会)、『多元化する「能力」と日本社会』(NTT出版、第6回大佛次郎論壇賞奨励賞)、『「家庭教育」の隘路』(勁草書房)、『軋む社会』(河出文庫)、『教育の職業的意義』(ちくま新書)、『学校の「空気」』(岩波書店)、『もじれる社会』(ちくま新書)、『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)など。

 

 

■学術講演要旨■(本田由紀先生より)

 90年代以降、経済の低迷、少子高齢化と人口減少、困窮層の蓄積と世代間連鎖、著しいジェンダー不平等など、日本社会には様々な機能不全が顕在化している。その底流にあるのは、社会・政治・人間に関する特定の考え方・感じ方である。マクロな社会構造と、ミクロな人々の意識が相互に連関し合って現状を生み出してきたプロセスを、国際比較や長期推移に関する諸データから読み解くことを試みる。

参考著書:本田由紀『「日本」ってどんな国?』(ちくまプリマー新書、2021年)

      本田由紀『社会を結びなおす』(岩波ブックレット、2014年)